旧暦

38年ほど前に隣国の女性を鑑定したときのことです。

 

お名前と生年月日を書き留めて鑑定をはじめようとすると「すいません、その生年月日、日本だと違うかもしれません」と。

 

「どういうことですか?」と尋ねると「あの、私の誕生日は日本だと毎年変わるんです。ですからその生年月日は違うかもしれないんです」

 

20代の私は隣国の方の誕生日が日本でいうところの旧暦なのを知らなかったのです。

 

グレゴリオ暦を採用している日本の暦(カレンダー)を基準にすると旧暦の正月が毎年違うように旧暦の誕生日も毎年変わります。今の若い方がどうされているのかは知りませんが、その頃鑑定した隣国の方の誕生日はみなさん旧暦でした。

 

誕生日の説明を聞いて萬年暦で対応できたことは幸いでしたが「この生年月日は旧暦なのですか」とは口にしませんでした。彼女の誕生日に対して旧暦という言葉を使うのは失礼にあたると思ったからです。

 

もちろん年が明ければ、旧年中は、と挨拶し、旅館などで新館ができれば、もとからある館を旧館と呼び、姓が変われば元の姓を旧姓というように改暦されれば元の暦を旧暦と呼ぶにすぎません。

 

私の世代では「旧帝大出身」は誇らしげに語られる言葉でしたし、「旧知の仲」「旧交をあたためる」「旧友」は懐かしさを感じる言葉です。

 

「大漢語林・大修館書店」で「旧」の字義を調べると「ふるい、ふるいもの、ふるくさい、昔の、過去の、もと」などの言葉が並びます。かといって「旧暦」をふるいものあつかいしているわけではありません。

 

しかし日本では旧暦は確実に過去のものになっているのでしょう。このブログでも書きましたが旧暦の正月(旧正月)を認識している方はそれほど多くないと思います。

 

グレゴリオ暦を採用している日本では太陰太陽暦の正月を旧正月といいますが中国・韓国・シンガポール・マレーシア・などアジアの各国は太陰太陽暦の正月が正式の正月です。だからこそ太陰太陽暦のお正月が祝日でその前後が年末年始の連休になっているのです。

 

韓国で開かれた平昌オリンピックで羽生結弦選手が復活した2月16日が今年の太陰太陽暦の正月でした。韓国では前日の2月15日から正月の連休に入り2月16日は韓国国内の帰省とオリンピックの観客が重なって交通機関も大変だったようです。

 

太陰太陽暦の正月を祝っているアジアの方々に「旧正月」というと不思議に思われるでしょう。アジアの人々にとって旧暦の正月こそが正月でけして過去の旧(ふる)いものではないからです。