社名の由来 ドトールコーヒー②

ドトールコーヒーの創業者が会社をやめてブラジルに渡り、希望と不安が交錯する中で、コーヒー園で働き、コーヒーのことを学びながら創業への第一歩を踏み出した原点の場所が、そのアパートなのでしょう。

 

しかし、修行したコーヒー園の地名でもよかったでしょうに、なにゆえアパートの住所が社名になったのでしょう。

 

コーヒー園で働きながら豆のことや焙煎のことなどを学ぶ日々を過ごしながら、勝手な想像ですが、アパートの一室でさまざまな思いが去来したと思うのです。

 

ある時は、将来の展望を描きながら気分が高揚したり、ある時は、本当にやれるのかという鉛をかかえたような重っ苦しい不安にさいなまされたり。とにかく、そのアパートの一室からすべては始まった。

 

菜根譚(さいこんたん)に次のような言葉があります。

青天白日の節義は、暗室屋漏の中より培いきたる
(せいてんはくじつのせつぎは あんしつおくろうのなかより つちかいきたる)

 

※白日 明るく輝く太陽、やましいところのないたとえ
※屋漏 家の北西の隅。家の一番奥まった所、転じて人に見られな
い所

 

青天白日のような堂々とした節義も、実際には人目につかないくらい奥深い部屋の中から養われて出てくる。人間の大節は人知れぬ平素の修養から生まれてくる。
中国古典名言事典(講談社

 

菜根譚」が言うところの「暗室屋漏(あんしつおくろう」が「ドトール・ピント・フェライス通り85番地」のアパートだったのだと思います。そのアパートがドトールコーヒーの原点ということなのでしょう。

 

世阿弥能楽の修行について語った

しかれば、当流に万能一徳の一句あり 初心不可忘
にもとずく

 

初心忘るべからず

という言葉があります。

 

「はじめの志を忘れてはならない」
という戒めでしょう。ドトールコーヒーという社名にはブラジルのアパートの一室で立てた志を忘れない、「初心忘るべからず」の思いもこめられているのかもしれません。


喫茶業が世の中に存在する意義は何か


一杯のコーヒーを通じてやすらぎと活力を提供することこそが、喫茶業の使命にほかならない


ドトールコーヒー 創業者の信念