(続)クリスマス
クリスマスの朝の渋民は積雪はあるものの天気はよく、歩いて啄木ゆかりの地を散策しました。眼前には美しい岩手山がありました。北上川もあります。
かにかくに渋民村は恋しかり
おもひでの山
おもひでの川
今、この歌の風景を見ているのだなと確かめながら啄木の記念館などをめぐり北上川沿いに建つ歌碑に行きました。大きな歌碑でしたがそこに刻まれていた歌は“一握の砂”の中であまり目にとめていないものでした。
やわらかに柳あをめる
北上の岸辺目に見ゆ
泣けとごとくに
背景には岩手山があります。“柳あをめる”季節ではありませんでしたが啄木は東京でこの景色を思い浮かべて歌ったのかと、感じ入ってしまいました、次の二首を心にとめ
。
石をもて追わるるごとく
ふるさとを出(い)でしかなしみ
消ゆる時なし
ふるさとの訛(なまり)なつかし
停車場の人ごみの中に
そを聴きにゆく
イブの夜に盛岡の街に入り、クリスマスの朝に啄木のふるさとを歩いた、雪景色の中で多感な10代をふりかえることができました。
帰りの特急列車で駆け抜けていく車窓の景色を眺めながら
糸きれし紙鳶(たこ)のごとくに
若き日の心かろくも
とびさりしかな
この歌をかみしめました。
そして、たとえ実業でなくてもこの道を進もうと思ったのでした。40年ほど前のクリスマスの思い出です。