社名の由来 ドトールコーヒー①
前回、スターバックスコーヒーの社名の由来について書きました。今回はドトールコーヒーの社名の由来について。
「ここ、安くて美味しいんだよ」と友人から誘われて初めてドトールコーヒーに行ったのは原宿店でした。
その後、渋谷1丁目店にひとりで行くようになりました。渋谷神南1丁目店は店内が広く打ち合わせに何度も利用したことがあります。
埼玉に行ったときに入った、さいたま新都心店も店内が広く、朝の早い時間だったこともあり、ゆったりとしていました。
個人的にはマスターがいてドアを開けるとカランとなるような昔ながらの喫茶店が好きなのですが、チェーン店におされて、そのようなお店は街から消えていきました。
ドトールコーヒー渋谷1丁目店近くにある「茶亭羽當(はとう)」はお洒落で、かつノスタルジーな気持ちを喚起させてくれる好きな喫茶店でした。夏になるとオ・レ・グラッセを注文していたことを思い出します。
居所を田舎に移し最後にいったのが10年前ですから今はどのようになっているのでしょう、もの静かな二人のマスターは今もカウンターに立っていらっしゃるのでしょうか。
ドトールコーヒーの話に戻ります。今、住んでいる田舎町にもドトールコーヒーはあります。書店に併設されていますのでときどき利用しています。
そのドトールコーヒーのドトール(DOUTOR)は、ポルトガル語で「博士」という意味なのだそうです。
会社を退職し、コーヒーの勉強をするためにブラジルに渡ったドトールコーヒーの創業者が借りたアパートの住所に「ドトール(DOUTOR)」の名前が入っていた、その住所名を社名にしたらしいのです。
正式な住所は「ドトール・ピント・フェライス通り85番地」。「ピント・フェライス」という方は医学博士なのだそうです。
通りの名前になるくらいですからブラジルの医療に貢献された方なのだろうと思います。
地名が社名にもちいられることはあります。
「いすゞ自動車」の「いすゞ」は伊勢神宮ゆかりの清流「五十鈴川」に由来しているといわれています。シュウマイで有名な「崎陽軒」の「崎陽」は創業者の出身地である長崎の地名が由来です。
ドトールコーヒーの創業者はどうしてブラジルで住んだアパートの住所を社名にしたのでしょう。理由は御本人にお尋ねしなければわかりません。ただ想像はできます。
これまで脱サラして独立された方を多く見てきました。独立を決断して退職し、具体的な一歩踏み出す時、人は希望と不安・恐怖が入り混じった尋常ならざる精神状態になることがあります。
お店のオープンの日に果たして来客があるのだろうかという不安も大変なものです。最初のお客さまの顔と買っていただいた商品を忘れられない経営者がいます。お釣りを渡す手が震えた経営者がいます。廊下に響く靴音の主が自分の事務所の戸をあけてくれ、と祈った弁護士がいます。
ドトールコーヒーの創業者が会社をやめてブラジルに渡り、希望と不安が交錯する中で、コーヒー園で働き、コーヒーのことを学びながら創業への第一歩を踏み出した原点の場所が、そのアパートなのでしょう。
しかし、修行したコーヒー園の地名でもよかったでしょうに、なにゆえアパートの住所が社名になったのでしょう。