十干と恵方

庚申様(こうしんさま)のことでひとつ書き忘れていたことがありました。歌舞伎の演目で「三人吉三巴白波(さんにんきちさともえのしらなみ)」というものがあります。

「こいつぁ春から縁起がいいわえ」の名台詞で知られる歌舞伎です。

お嬢吉三の七語調の名台詞

月も朧(おぼろ)に白魚の
篝(かがり)も霞む春の空
冷てえ風もほろ酔いに
心持よくうかうかと
浮かれ烏(からす)のただ一羽
ねぐらへ帰る川端で
竿の雫(しずく)か濡れ手で粟
思いがけなく手に入(い)る百両
(呼び声)
おん厄払いましょう 厄おとし
ほんに今夜は節分か
西の海より川の中
落ちた夜鷹は厄落とし
豆だくさんに一文の
銭と違って金包み
こいつぁ春から縁起がいいわえ

「ほんに今夜は節分か」「厄落とし」と恵方にもからんでいますが、この名台詞の場面を「大川端庚申塚の場」といいます。

現代ではあまり意識されていない干支(えと)の干(え)、十干(じっかん)に注目していただきたいと思いずいぶんと横道にそれてしまいました。

歳徳神(としとくじん)の在泊する方位、すなわち恵方の方角はその年の十干が何であるかによって決まるという話でした。

甲(きのえ) の年 東北東
乙(きのと) の年 西南西
丙(ひのえ) の年 南南東
丁(ひのと) の年 北北西
戊(つちのえ)の年 南南東
己(つちのと)の年 東北東
庚(かのえ) の年 西南西
辛(かのと) の年 南南東
壬(みずのえ)の年 北北西
癸(みずのと)の年 南南東

 

今年の干支は戊戌(つちのえいぬ)。十干は「戊(つちのえ)」ですから恵方は南南東になります。来年の干支は己亥(つちのとい)。来年の十干は己(つちのと)ですから恵方は東北東ということになります。
※細かくいえば「南南東やや南「西南西やや西」とかになりますが私は「恵方詣で」「恵方参り」にいく神社仏閣は「だいたい南南東」くらいで選んでいます。恵方巻丸かぶり寿司)も「だいたいこのあたり」と部屋の置物などを指して家族で食べています。

※干支(えと)は干支(かんし)ともいいます。「干」が「かん」、「支」が「し」です。干は10、子は12ありますので「十干十二支(じっかんじゅうにし)」といいます。
◎十干(じっかん)は十干(じゅっかん)と読む場合もあります。



十干と十二支の組み合わせが干支なのですが、10と12の最小公倍数によって干支は「六十干支」あります。
読み方は字義から「丁酉(ひのととり)」と読みますが歴史的な出来事のように音読みで「丁酉(ていゆう)」ともいいます。

六十干支の読み
甲子(きのえね・かっし)  
乙丑(きのとうし・いつちゅう)
丙寅(ひのえとら・へいいん)
丁卯(ひのとう・ていぼう)
戊辰(つちのえたつ・ぼしん)  
己巳(つちのとみ・きし)
庚午(かのえうま・こうご)  
辛未(かのとひつじ・しんび)
壬申(みずのえさる・じんしん)
癸酉(みずのととり・きゆう)
甲戌(きのえいぬ・こうじゅつ)
乙亥(きのとい・いつがい)
丙子(ひのえね・へいし)  
丁丑(ひのとうし・ていちゅう)
戊寅(つちのえとら・ぼいん)  
己卯(つちのとう・きぼう
庚辰(かのえたつ・こうしん) 
辛巳(かのとみ・しんし)
壬午(みずのえうま・じんご)  
癸未(みずのとひつじ・きび)
甲申(きのえさる・こうしん)       
乙酉(きのととり・いつゆう)
丙戌(ひのえいぬ・へいじゅつ)       
丁亥(ひのとい・ていがい)
戊子(つちのえね・ぼし)       
己丑(つちのとうし・きちゅう)
庚寅(かのえとら・こういん)       
辛卯(かのとう・しんぼう)
壬辰(みずのえたつ・じんしん)       
癸巳(みずのとみ・きし)
甲午(きのえうま・こうご)       
乙未(きのとひつじ・いつび)
丙申(ひのえさる・へいしん)       
丁酉(ひのととり・ていゆう)
戊戌(つちのえいぬ・ぼじゅつ)       
己亥(つちのとい・きがい)
庚子(かのえね・こうし)       
辛丑(かのとうし・しんちゅう)
壬寅(みずのえとら・じんいん)       
癸卯(みずのとう・きぼう)
甲辰(きのえたつ・こうしん)       
乙巳(きのとみ・いつし)
丙午(ひのえうま・へいご)       
丁未(ひのとひつじ・ていび)
戊申(つちのえさる・ぼしん)       
己酉(つちのととり・きゆう)
庚戌(かのえいぬ・こうじゅつ)       
辛亥(かのとい・しんがい)
壬子(みずのえね・じんし)       
癸丑(みずのとうし・きちゅう)
甲寅(きのえとら・こういん)       
乙卯(きのとう・いつぼう)
丙辰(ひのえたつ・へいしん)       
丁巳(ひのとみ・ていし)
戊午(つちのえうま・ぼご)       
己未(つちのとひつじ・きび)
庚申(かのえさる・こうしん)       
辛酉(かのととり・しんゆう)
壬戌(みずのえいぬ・じんじゅつ)       
癸亥(みずのとい・きがい)