命名の話

命名の話をもうひとつ。3年前のある日、出生届の期限まであと3日という御夫婦から命名の相談が飛び込んできました。こんなに差し迫った段階で命名の相談がくることは稀なことです。

いきさつをお聞きすると、もともと画数を気にする方で、子供の名前には吉数のいい名前をつけたいと思っておられたとのこと。そこで出産前から、名づけに関するいろいろな本を読んで御夫婦で命名を試みたけれどなかなかうまくいかない。

どうしようかと悩んでいたときに知人の紹介で姓名判断のある流派の方に命名の依頼をされ、出産の翌日に三つの名前が提示されたそうなのです。

ところが三つともしっくりこないというか、どうもピンとこなかったそうです。ピンとくる、ピンとこないは感覚的なものですから理屈ではどうにもならない世界です。

私も自分の子供の命名のときに、最初、五十ほどの名前を考え、そこから五つに絞って妻にみせたら「どれもピンとこない」といわれた経験があります。

それで観点をかえて、七十くらいの名前を考え、そこから五つを選んで再度妻に見せると、生まれたばかりの我が子を見つめながら「この名前がいい、この名前が、この子にぴったりくる」とひとつの名前を指さしていいました。

この自らの経験もあって、子供の命名の際に、複数ある名前の候補を絞り切れない時は、生まれた我が子を抱いて、ピンとくる名前を選んだらいかがですかとアドバイスすることがあります。


出生届の期限まであと三日と迫った御夫婦の話に戻ります。

せっかく運勢のいい名前を提示してもらったのに、どうもしっくりこない。悩みに悩んでいるうちに時が過ぎて、出生届の期限が迫ってきたのです。そんな時に私のことを紹介されておみえになったのでした。

提示された三つの名前をみると、すぐに姓名判断の流派が特定できました。その流派の特徴が三つの名前に共通してあらわれていたからです。

その流派は、画数の吉凶・五行・陰陽の配列を厳密に扱いますので当然のことながら使える漢字が限定されます。

それに加えていくつかの禁忌事項があり、さらに忌み字の指定が結構ある流派なのです。

忌み字とは、画数や五行や陰陽に関係なく命名に使ってはいけないとされる漢字のことです。名づけ事典(名前事典)で忌み字を扱っているものはないと思います。

姓名判断の流派でも忌み字を指定していないところも多いですが、忌み字を禁じる流派も複数あります。ネットでも命名に使ってはいけない漢字として忌み字のことを説明しているサイトが存在しています。
※忌み字については後日あらためて説明します。


画数の吉凶・五行・陰陽・忌み字、そのすべてを満たそうとすれば、名前の候補がかなり限定されることは仕方がありません。なぜ似通った名前が三つ提示されたのかを、その流派の命名法を解説しながら御夫婦に説明しました。

お話をしていく中で、御夫婦としては、画数は気になるが、そこまで厳密に姓名判断を駆使してとは考えていらっしゃらないことがわかりました。

そこで姓名判断としてみるポイントを絞ることを了解していただき、御夫婦の希望もお聞きし、一日半で五つの名前を考えて提案いたしました。

幸いにも、そのうちの一つの名前を気にいっていただき、出生届の期限最終日になんとか間に合うことができました。