長生きしますかね。

ずいぶん前の話です。84歳の女性から「私、長生きできますかね?」と尋ねられた時、私は30歳になったばかりでした。

 

30歳の私には84歳はすでに長寿だと思えました。もちろん「すでに長生きされているではありませんか」とは口にしませんでした。

 

「私、ぼけませんか、長生きよりもボケるのが心配で」とはじけるような笑顔でおっしゃった沖縄のおばあは91歳でした。

 

おばあの知能線は手のひらを完全に横切るほどに長く、日々、お稽古事や何かの勉強会があれば積極的に参加されるなど好奇心旺盛で脳の血流はよどみなく流れているように思いました。


その後も80代90代の方から何度かそのような問いをうけましたが、当時の私は、その心理を本当の意味で理解することはできませんでした。

 

60代になった今、その頃よりもわかるような気はします。しかし、まだ、わかる、とはいいきれません。

 

やはり自分自身が80代になってみなければわからないのかもしれません。80代になるまで20年をきりました。