社名の由来②

資生堂」の由来は四書五経のひとつである易経にあります。易経の「至哉坤元 万物資生」(いたれるかなこんげん ばんぶつとりてしょうず)の資生から「資生堂」です。

 

易経の意味は「大地の徳はなんと素晴らしいものか。すべてのものはここから生まれる」といった感じでしょうか。

 

坤が大地。乾坤一擲(けんこんいってき)の坤、八卦の乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤の坤です。

 

乾(けん)の象意は天、坤(こん)の象意は地。薬局からはじまった会社らしい社名なのかもしれません。

 


杏林製薬」の社名は、古書「神仙伝」の故事に由来します。


杏林(きょうりん)
杏(あんず)の木の林。転じて、医者。医院。また、無償の診療のたとえ。
三国時代、名医として名高かった呉の董奉(とうほう)は、治療代を受け取らず、そのかわりに、重病の者には五本、軽い病気の者には一本の杏の木を植えさせた。

かくして数年後に十万余株の広大な杏の林が出来あがってからは、杏子(あんず)の実を器一杯の穀物とひきかえに持たせてやった。こうして蓄財し、それをもって貧窮者を救済し、奉自身も、三百余歳の寿を保ったという伝承に基づく
漢文名言辞典(大修館書店)

 


四書五経故事成語に由来する命名は、慶応・明治・大正・昭和・平成などの元号を含め、命名法の大きな柱のひとつです。

 

すでに紹介しましたが、易経の「至哉坤元 万物資生」(いたれるかなこんげん ばんぶつとりてしょうず)の資生から「資生堂」が命名され、

 

論語の学而篇の「吾日三省吾身」(われ日にわが身を三省す)から「三省堂」、

 

中国の兵法書六韜(りくとう)」の永久に変わらないことを意味する「萬代不易(ばんだいふえき)」から「バンダイ」。


孫子」の「勝者の民を戦わしむるや、積水を千仭(せんじん)の谷に決するがごとくなるは形なり」から「積水ハウス」、

 

有田焼の「香蘭社」は易経の「君子の交わりは、蘭の宝の香りの如し」から。


社名ではありませんが、「夏目漱石」の「漱石」は、晋の詩人・孫礎の「まさに石に枕し流れに漱(くちすす)がんと欲す」にまつわる話から。

 

人気俳優で「桃李」という名前の方がいらっしゃいます。この名前はおそらく「史記」からきているのだと思います。


桃李不言 下自成蹊
桃李もの言わざれども、下おのずから蹊(けい)を成す
桃やすももは何も言わないけれど、美しい華や実があるからおおくの人が集まって来て、その木の下には自然に小道ができる。徳のある人はだまっていても自然に人々が帰服するたとえ。
漢文名言辞典(大修館書店)


香港のホテル日航の中華レストランの名前も「桃李」だったと記憶しています。

 

また、この故事の「おのずから蹊(けい)を成す」は「成蹊大学」の名前の由来にもなっています。